子供の虫歯治療|放置リスクと治療法まとめ【歯科医が徹底解説】

虫歯を放置するとどうなる?

乳歯の虫歯が与える影響

「乳歯はいずれ抜けるから虫歯になっても大丈夫」と考える方は少なくありません。しかし、これは大きな誤解です。乳歯の虫歯を放置すると、永久歯の健康や歯並びに深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 永久歯への影響:乳歯の根の下には次に生えてくる永久歯の芽があり、虫歯が進行すると炎症が永久歯に伝わり、変色や形成不全を起こすことがあります。
  • 歯並びへの影響:虫歯で乳歯を早期に失うと、隣の歯が倒れ込んでスペースを失い、永久歯が正しい位置に生えにくくなります。
  • 全身への影響:進行した虫歯は痛みや感染を引き起こし、発熱や食欲低下につながることもあります。

心理的な影響

虫歯による痛みは、子供に「歯医者さんは怖い場所」という印象を植え付けてしまいます。小さいうちに強い痛みや抜歯の経験をすると、その後も歯科受診を嫌がる傾向が強まり、結果的に口腔内環境が悪化するという悪循環につながることもあります。

子供の虫歯治療法

初期虫歯(C0〜C1)の治療

初期段階の虫歯(白濁や小さな点状の虫歯)は、削らずに治せる場合があります。この段階では「再石灰化」を促す処置が中心です。

  • フッ素塗布:高濃度フッ素を歯の表面に塗り、エナメル質を強化して進行を抑えます。
  • フッ素洗口・歯磨き指導:自宅でのケアを見直し、再石灰化を促す習慣を作ります。
  • 経過観察:歯を削らずに定期的にチェックし、進行が止まれば治療不要となることもあります。

この段階で発見できれば、痛みもなく、歯を削る必要もほとんどありません。だからこそ「早期発見」が重要です。

中等度の虫歯(C2)の治療

虫歯がエナメル質を越えて象牙質に進むと、冷たいものや甘いものにしみるようになります。この段階では虫歯部分を削り、詰め物をする治療が必要です。

  • CR充填(コンポジットレジン修復):白い樹脂で虫歯を削った部分を埋める方法です。見た目が自然で、治療時間も短いのが特徴です。
  • 金属の詰め物(小児では稀):広範囲の虫歯の場合、耐久性を考慮して金属の修復が選択されることもあります。

中等度虫歯は放置するとすぐに神経まで到達するため、早めの治療が大切です。治療自体は比較的短時間で終わります。

重度の虫歯(C3〜C4)の治療

虫歯が神経まで達すると、強い痛みを伴います。この段階では「根管治療」や「抜歯」が必要になるケースもあります。

  • 乳歯の根管治療:虫歯菌に侵された神経を取り除き、消毒して薬を詰める治療です。永久歯の根管治療に比べて簡略化されていますが、子供にとっては大きな負担です。
  • 抜歯:歯を保存できない場合、抜歯が選択されます。その場合は「保隙装置」という器具を入れ、永久歯が正しい位置に生えるためのスペースを確保します。

重度の虫歯は治療も複雑で、子供の心身に負担が大きいのが現実です。だからこそ、ここまで進行させないことが最も大切です。

治療後のケアと予防の重要性

再発防止のためのポイント

虫歯は一度治療しても再発することがあります。治療後のケアを怠ると、同じ歯が再び虫歯になる「二次カリエス」が起こりやすいのです。

  • 仕上げ磨きの継続:治療後も親の仕上げ磨きは欠かせません。
  • フッ素習慣の維持:フッ素塗布やフッ素洗口を継続することで歯質を強化します。
  • 定期検診:3〜6か月ごとに歯科医院でチェックし、早期に異常を発見します。

親ができるサポート

子供にとって歯科治療は大きなストレスです。治療前後には親御さんのサポートが欠かせません。

  • ポジティブな声かけ:「頑張ったらご褒美に絵本を読もうね」など前向きな声かけが効果的です。
  • 恐怖心を煽らない:「痛くないよ」と言い過ぎると逆効果。正直に「先生が優しく治してくれるよ」と伝える方が安心につながります。
  • 生活習慣の見直し:間食や就寝前の飲食習慣を整えることが再発防止に直結します。

治療後のケアと予防の重要性

子供の虫歯治療は、進行度によって大きく内容が変わります。初期ならフッ素で削らずに済むこともありますが、中等度以降は削ったり詰めたりする必要があり、重度になると根管治療や抜歯が避けられません。さらに放置すれば永久歯や歯並びにまで悪影響が及びます。

最も大切なのは「虫歯を早期に発見し、早期に治療する」こと。そして治療後も再発を防ぐために、家庭での仕上げ磨きやフッ素習慣、定期検診を欠かさないことです。親御さんと歯科医院が協力することで、お子さまの健やかな歯を一生守ることができます。