子供の歯並び矯正の基礎知識|原因・方法・費用まで歯科医が解説

歯並びが悪くなる原因

遺伝と生活習慣

子供の歯並びは、生まれ持った顎や歯の大きさといった「遺伝的要素」と、日常生活の中での「習慣」が複雑に絡み合って決まります。例えば、親の歯並びがガタガタしている場合、子供も同じように歯の大きさと顎のバランスが合わず、歯並びが乱れる可能性が高くなります。

一方で、生活習慣も大きな影響を及ぼします。食事の際に片側だけで噛む癖があると顎の成長がアンバランスになり、歯並びに偏りが生じます。また、柔らかい食べ物ばかりを食べていると咀嚼回数が減り、顎の骨が十分に発達しないため、歯が並ぶスペースが不足してしまいます。

指しゃぶりや口呼吸

長期間の指しゃぶりや口呼吸も歯並びに悪影響を与える代表的な要因です。特に3歳以降も指しゃぶりが続くと、前歯が前方に押し出されて「出っ歯」になったり、上下の前歯の間に隙間ができる「開咬(かいこう)」になることがあります。

また、口呼吸の習慣は口周りの筋肉の発達を妨げ、歯並びだけでなく顔の成長にも影響します。鼻呼吸ができないことで、上顎が狭くなり歯が並ぶスペースが不足するケースも少なくありません。生活習慣の改善は、矯正治療以上に大切なポイントになるのです。

小児矯正の方法

プレオルソの特徴

小児矯正の中でも近年注目されているのが「プレオルソ」というマウスピース型の矯正装置です。柔らかいシリコン素材でできており、取り外しが可能なため子供の負担が少ないのが特徴です。就寝時や家にいるときに装着するだけで、歯並びや噛み合わせを改善していきます。

  • ・適応年齢:4歳〜10歳前後の混合歯列期
  • ・特徴:取り外し可能で痛みが少ない、発音練習や口呼吸改善にも有効
  • ・メリット:ワイヤー矯正に比べて違和感が少なく、学校生活にも支障をきたしにくい

プレオルソは「歯を並べる」だけでなく、「顎の成長を促す」「舌や口の筋肉の使い方を改善する」といった効果も期待できます。小児期だからこそできる矯正方法として、多くの歯科医院で導入されています。

咬合誘導の考え方

小児矯正には「咬合誘導」という考え方があります。これは、乳歯から永久歯に生え変わる時期に、顎や歯の成長を正しい方向に導くことで、将来の歯並びを整える方法です。例えば、顎の骨を広げる装置を使ってスペースを確保したり、歯の生える向きを調整することで、大がかりな矯正をしなくても自然にきれいな歯並びに誘導できます。

咬合誘導のメリットは、早期に始めることで「抜歯矯正を避けられる可能性が高まる」ことです。永久歯が生え揃ってから矯正を行う場合、歯を並べるスペースが足りずに健康な歯を抜くことがありますが、小児期から顎の成長を正しく導けばそのリスクを減らせます。

費用と通院期間

咬合誘導の考え方

小児矯正の費用は、治療方法や医院によって差がありますが、おおよその目安は以下の通りです。

  • ・プレオルソなどマウスピース矯正:10万〜40万円程度
  • ・拡大装置や咬合誘導:20万〜60万円程度
  • ・本格的なワイヤー矯正に移行する場合:さらに50万〜100万円程度

成人矯正に比べると小児矯正の方が費用は抑えられますが、それでも決して安い治療ではありません。ただし、早期に矯正を始めることで抜歯や大規模な矯正を避けられる可能性が高まり、長期的に見れば費用と負担を軽減できることも多いです。

治療期間と頻度

小児矯正の治療期間は1〜3年程度が一般的ですが、歯並びの状態や成長スピードによって異なります。永久歯が生え揃う12歳前後まで経過観察を行いながら、必要に応じて治療を継続します。

通院頻度は、装置の種類によって月1回〜2か月に1回程度です。プレオルソのようなマウスピース矯正では数か月ごとのチェックで済む場合もあり、学校生活に支障が出にくいのがメリットです。

まとめ

子供の歯並び矯正は、単に見た目をきれいにするためだけではなく、噛み合わせや顎の成長、さらには全身の健康にも関わる重要な治療です。歯並びが悪くなる原因には遺伝だけでなく生活習慣も大きく影響しており、指しゃぶりや口呼吸といった癖を早めに改善することが予防につながります。

小児矯正にはプレオルソや咬合誘導といった方法があり、早期に始めることで将来の大がかりな矯正を避けられる可能性があります。費用は数十万円単位になりますが、成長期のタイミングを活かした矯正は大人になってからの治療よりも効率的で、体への負担も軽減できます。

親御さんとしては、まず子供の歯並びに気になる点があれば早めに歯科医院で相談することをおすすめします。定期的な検診と適切なサポートで、お子さまの健やかな歯並びと笑顔を守っていきましょう。