入れ歯を初めて装着した方の多くが感じる悩みの一つに違和感があります。入れ歯は人工物であるため、天然歯のように体に馴染むまで時間がかかります。違和感が強いと「うまく噛めない」「しゃべりにくい」「外したくなる」といった問題が起こります。ではなぜ入れ歯は違和感を生じやすいのでしょうか。その原因を細かく見ていきましょう。
違和感の最も大きな原因は、入れ歯のサイズや形状です。総入れ歯は歯ぐき全体を覆うため、口の中の面積が大きく変化します。上顎の総入れ歯では口蓋を広く覆うため、話すときに舌が当たり、発音に影響することがあります。下顎の総入れ歯は舌や頬の動きに干渉しやすく、安定感に欠けることが多いです。
部分入れ歯の場合も、金属のバネ(クラスプ)が歯や頬に当たって違和感を覚えることがあります。また、入れ歯の厚みが大きいと「口の中が狭くなった」と感じ、舌の動きが制限されてしゃべりにくくなります。入れ歯は人工的に作られるため、天然歯の形態や大きさと完全に一致するわけではなく、適応に時間がかかるのです。
入れ歯は歯ぐき(口腔粘膜)の上に直接のせて使うため、粘膜との相性も違和感の原因となります。歯ぐきの厚さや形態には個人差があり、入れ歯が強く当たる部分があると、痛みや口内炎が生じます。特に義歯床の縁が長すぎたり鋭角になっていると、舌や頬を刺激して違和感が強まります。
また、入れ歯は噛み合わせのバランスが重要です。上下の咬合が合っていないと、噛むたびにずれる感覚や不自然な圧力を感じます。顎関節や咀嚼筋に負担がかかり、肩こりや頭痛の原因になることもあります。つまり違和感は単なる「異物感」だけでなく、機能的なアンバランスからも生じるのです。
入れ歯の違和感は一時的なことが多く、ほとんどの人は1〜3か月程度で慣れていきます。ただし、慣れるスピードには個人差があります。舌や頬の筋肉が柔軟に適応する人は早く慣れますが、口腔内が敏感な方や高齢で適応力が落ちている方は時間がかかる傾向があります。
最初の数日は「食べにくい」「話しにくい」と感じるのは自然なことです。特に総入れ歯は舌や唇の動きを妨げやすく、滑舌に影響することもあります。しかし、毎日使い続けることで口腔周囲の筋肉がトレーニングされ、徐々に適応していきます。
一方で、いつまで経っても痛みや強い違和感が続く場合は、入れ歯が適合していない可能性があります。その場合は我慢せず、歯科医院で調整を受けることが重要です。入れ歯は作ったら終わりではなく、細やかな調整を繰り返すことで初めて「自分の歯」として馴染んでいきます。
違和感を少しでも和らげるためには、日常生活の中でできる工夫があります。以下の方法を実践することで、入れ歯をより快適に使えるようになります。
さらに、自費診療の入れ歯には「金属床義歯」や「シリコン義歯」「ノンクラスプデンチャー」など選択肢があり、保険の入れ歯に比べて違和感を減らせることがあります。費用はかかりますが、快適さや長期的な安定性を求める方には有効な選択肢です。
入れ歯の違和感は、サイズや形、粘膜との相性、噛み合わせなど複数の要因で生じます。ほとんどの方は1〜3か月で慣れていきますが、強い痛みや不具合が続く場合は調整が必要です。慣れるまでの工夫として、装着時間を調整する、発音や咀嚼の練習を行う、筋肉を鍛えるなどがあります。入れ歯は作って終わりではなく、調整と工夫を重ねることで初めて快適に使えるものです。
違和感を減らし、自分の生活にしっかり馴染む入れ歯を手に入れるためには、歯科医との二人三脚が欠かせません。悩みを一人で抱え込まず、気になることは遠慮なく相談しながら、快適な口腔環境を整えていきましょう。